あなたが働いている、またはこれから入ろうとしているインターネット広告代理店の将来性が大丈夫なのかを考える人も多いのではないでしょうか。
この記事では、インターネット広告代理店の将来性やその時に訪れるであろう変化やその中でどのような行動が求められるのかをまとめました。
インターネット広告代理店で9年勤務し事業会社へ転職した僕が書いているのである程度信憑性はあると思います。
この記事を読むことで下記のようなことが分かります。
※世の中の状況は常に変化していくので、不定期にはなりますが更新をかけていければと考えてます
【結論】インターネット広告代理店は各々業態を変えて残り続ける
インターネット広告代理店は結論、
と思います。
様々な商品・サービスがコモディティ化してきている中でマーケティングは複雑化しています。
その中で単純にインターネット広告の代理販売・運用をするだけでは顧客を満足させることが難しくなってきました。
しかし、市場環境の変化や顧客のニーズを捉え変化していけるインターネット広告代理店は今後も存続していくと思います。
インターネット広告代理店の将来性を考えるために知っておきたい現在の状況・課題
インターネット広告費用は年々増加傾向
日本全体の広告費は全体的に増加傾向で、その中でもインターネット広告費が堅調に伸びていて他からシェアを奪っていることがわかります。
下記は電通が毎年出している広告費の内訳ですが、インターネット広告費は2022年前年比114%成長で総広告費の前年比104%を上回っています。
インターネット広告市場が堅調に推移していることがうかがえます。
しかし、時々勘違いしている人がいるのですが
「インターネット広告費用が伸びている≠インターネット広告代理店の売上も比例して伸びる」
ということではないので注意が必要です。
後述してますが、インターネット広告をけん引するGAFAMのようなメガプラットフォームの売上は伸びているかもしれませんが、必ずしも広告主が代理店を通して広告出稿を行っているわけではありません。
インハウス化
インターネット広告代理店に広告を任せるのではなく、自社内のマーケティング活動の一環として自社内で広告出稿を行う人材の採用・育成を行ったり専用の部署を構えている会社も多くなってきました。
わざわざインターネット広告代理店を介さなくても、プラットフォーム側にも広告主のサポート担当は存在していますし、Q&Aサイトのようなものを用意して調べれば広告出稿しやすい環境が整ってきています。
また、自社に移すことによって一貫したマーケティング活動を自社内で完結できたり意思決定から実行までをスピーディにできたりする部分もあることも理由のひとつです。
総合広告代理店・コンサル会社のデジタルマーケティング領域進出
総合代理店やコンサル会社もデジタルマーケティング部門を設立したり子会社を作ったりしてデジタルマーケティングに領域を踏み入れています。
総合代理店とインターネット広告代理店の資本業務提携や買収をすることによってデジタルマーケティング領域をカバーしているケースも見られます。
電通グループが大手インターネット広告代理店のセプテーニを連結子会社化したことは大きな話題となりました。
電通グループは10月28日、セプテーニ・ホールディングス(HD)の株式を追加取得し、(中略)連結子会社化すると発表。取得後の議決権所有割合は52.01%。
インターネット広告分野で強みを持つセプテーニとの関係を強化して、デジタルマーケティング分野を拡充する。2020年〜21年はネット広告が急拡大しており、人材の確保や、広告の成果を伸ばすための運用、分析といった業務能力の需要が高まっている。
AdverTimes「電通、セプテーニGを連結子会社化 電通ダイレクトはセプテーニHD傘下に」
総合代理店の認知(テレビCMなど)の領域とデジタルマーケティングの領域それぞれの強みを生かした総合提案ができる体制を整えています。
今後ももしかするとあっと驚くような買収や資本提携の動きが出てくるかもしれません。
クライアントニーズの多様化
世の中の商品・サービスはコモディティ化しなかなか広告だけでは成果を出しづらくなってきました。
デジタル上のマーケティングは単純にインターネット広告だけでなく、その先のサイトの質や所有しているSNSアカウントとの連動など様々な仕掛けを施す必要があります。
SEOやサイト改善のような様々な施策を求められることももちろんですが、
事業戦略としてどうしていくべきなのかにこたえてほしいというニーズ
も散見されます。
世の中の複雑な状況下での企業が抱えるマーケティング課題に対してインターネット広告だけでの解決は難しくなってきています。
機械学習による自動広告運用
GoogleやMetaなど機械学習を売りにした広告配信技術が発達してきました。
クリエイティブを自動生成するようなものもあり、まだまだ質はいまいちですが今後どうなっていくかわかりません。
クリエイティブの自動生成の質が高まってくるとまたインターネット広告代理店の提供価値が今のままだと下がってきてしまうかもしれません。
しかし、パフォーマンスから見て作るクリエイティブはできても、新しいアイディアやサービスのコンセプトに合わせたものなどはまだまだ苦手だったりするかもしれません。
サービスのコンセプトや事業フェーズ、世の中でどのような受け入れられ方をしているのか、顧客がどう考えているのかなど多角的に読み取ったうえで方向性を考えクリエイティブ戦略を立てるというような形で高い付加価値が求められます。
何かしら人間の手を加えなければならないところはあると思います。
目標・戦略設計やコミュニケーション設計などがマーケターの仕事となりネット広告運用者の仕事はより上流に動いていく可能性があります!
デジタルマーケティングの進化に対応するための人材確保
インハウス化などが進み、WEB広告代理店から他の会社へ人材流出が起きています。
ネット広告代理店はせっかく育ててもインハウスマーケターやコンサルティングといった他業種に人材が流出してよい人材をとどめておけず優秀な人材を確保しづらい現状があります。
大手メーカーや金融、IT系事業者が社内のマーケティング部門でデジタル部署を作っているので彼らが出す給与水準も高いですし、福利厚生もかなりよかったりします。
また、代理店からGAFAMが提供するような外資系プラットフォームは給与水準もかなり高いので給与水準という面でも太刀打ちできず人材の流動性が高くなっています。
若手もベンチャー企業の魅力的かつイケイケな採用メッセージを見たり若くてかっこいい社長の話を聞いて勢いで抜けて行ったりします(苦笑)ので人材確保は必至です。
今後想定されるインターネット広告代理店の将来の変化
市場環境の変化や現状の課題・問題点に対応するために今後どのような変化が想定されるのでしょうか。
様々あると思いますがネット広告代理店で働いている方により起こり得そうなものをできるだけピックアップしてみました。
オンライン・オフライン問わず統合的なマーケティングが求められる
マーケティング活動が複雑化した現代では、オンラインかオフラインかという分け方ではなく、
どういったメディアが自社のマーケティング活動に適しているのか、現状の課題にあった施策は何か
という観点が非常に大事です。
ちなみに、オンライン・オフライン統合のマーケティングはOMO(Online Merges with Offline)と呼ばれたりします。
下記本は、アフターコロナ後のオフラインの時代に生き残るというテーマでOMO型ビジネスについて書かれていて様々な示唆に富んでいて面白いのでよければこちらの本を読んでみてください。
サービスの要件定義や開発から事業会社と協力して立ち上げていくコンサルのような動きも
上記とも少しかぶりますが、
そもそも〇〇といったビジョン・ミッションを持った会社が△△という課題を解決するために、どんなサービスを立ち上げていくべきなのか
という視点でのコンサルティングやサービスの要件定義など上流工程からのサポートを求められる場面も出てくると思います。
より上流から入ることによってコンサルティングフィーやその後のマーケティング活動で発生するマージンや利用料などをとっていくことでより利益率が高くなり中長期的なプロジェクトに注力していく会社も出てくるかもしれません、
M&Aや資本提携により独自の強みを掛け合わせ総合的な提案を実施
課題のところでインターネット広告代理店と総合代理店の提携例を紹介しましたが、何も広告会社同士だけではありません。
顧客の課題を掛け合わせた提携の話は様々あります。
例えば、サイバーエージェントとデザイン会社のグッドパッチがDX支援領域での業務提携開始を告知してます。
本提携では、サイバーエージェントが提供するDX支援事業において、グッドパッチのデザイナーが参画し、共に顧客の課題解決にあたるほか、両社のノウハウを生かした共同提案を通じて、デジタルサービス、およびプロダクト開発を通じたDX支援の強化を目指します。
グッドパッチ公式サイト「グッドパッチとサイバーエージェントが DX支援領域で業務提携を開始」
グッドパッチはその中のUI/UXを整えるところに参画するのではないでしょうか。
下記、サイバーエージェントのDX支援事業のプレスリリースですので見たい方は覗いてみてください。
サイバーエージェントDXでは、既存のDX支援事業会社の多くが、業務効率化や電子化などコスト削減を目的としたサービスを提供しているのに対し、企業の収益拡大を目的としたDX推進に特化し、広告事業の立ち上げをはじめ、データ基盤の構築、アプリの開発・運用までを一気通貫でサービス提供を行ってまいります。また、DX人材の採用および育成を強化し2023年までに約100名の採用を行い、2025年に売上高100億円を目指してまいります。
サイバーエージェント公式サイト「DXにより企業の収益拡大を支援する 株式会社サイバーエージェントDXを設立」
コンテンツ制作やサイト改善など一部のサービスを尖らせて受注・広告配信を請け負う
最近はTikTok専門の広告代理店みたいなものも登場してきていて、一部のサービスに特化してそこだけは負けないぞというような形でやっている企業も出てきました。
幅広く事業を提供しようとすると浅く広くなってしまい総合代理店や大手インターネット広告代理店に打ち勝つことが難しいため、一部に特化して専門部隊を作って強みを出していく会社も増えていくと思います。
広告全般もできるけど、特にこの分野が強いというのをとがらせて、強みを出せるポイントで営業活動をしていくことが多くなるでしょう。
広告事業にシナジーの高い事業を立ち上げ収益拡大
広告事業だけではなく、将来を見越してインハウス化支援・DX支援、広告運用/分析ツール提供など様々な事業を展開し始めています。
デジタルホールディングスは、沿革を見ると2008年に
「インターネット広告代理店市場シェアNo.1を獲得」
※デジタルホールディングスの沿革ページ
と書かれていますが、現在はサイバーエージェントや電通・博報堂がインターネット広告代理という観点で上位に位置していると思います。
引き続き広告分野も伸ばしていくように事業運営されていくと思いますが、現在最も注力しているのは決算資料を見る限りDX支援なのかなと思います。
インターネット広告事業を主軸としながらも他分野に展開して事業シナジーを生みなして利益を拡大したり、事業ポートフォリオを分散していく動きになると思います。
インターネット広告代理店の想定される変化の中でどう働くべきか
ここまでどのような変化が想定されるかを見てきましたが、ここからはその中でどのように働いていくべきなのかについて考察します。
結論、インターネット広告運用だけしかできない人材は淘汰されると思います。
淘汰されないためには、すぐに転職を考えるというよりは、その場でどのような考え・視点を持って働くかが重要になると思います。
変化を楽しむ
広告代理店はいつのときも市場のトレンドや規制などの中で変化しながら生き抜いてきました。
時代の潮流を見てインターネット広告事業をスタートさせ、携帯電話の登場、スマートフォンの普及、新しいSNSの登場、個人情報取得制限の問題など様々な変化の中でサービス形態を変えたり注力する事業を変えたりしながら生き残ってきています。
そういった中でこれからも時代の流れやトレンドで変化していくはず。
この変化を楽しんで逃げずに第一線で戦っていく経験がビジネスの様々な経験で生きてくるはずです。
ネット広告以外に関われるチャンスは積極的に拾っていく
インターネット広告運用者の中にはGoogleやYahoo!といったプラットフォームの管理画面を操作できることに価値があると考えている人もいるかもしれませんが、それには何の価値もありません。
とわいえ余談ですが、転職活動するとそういうところに価値を感じている人もいます。
しかし、そういう会社には入らないほうがいいと思います。
話はそれましたが、インターネット広告運用業務範囲は会社によって微妙に異なります。
広告流入先のLP改善やクリエイティブ改善、事業分析、アトリビューション分析など全体のことを指していることもあります。
単に管理画面に入稿して入札調整やクリエイティブの停止・開始などの判断をインターネット広告運用と言っている場合もあります。
できるだけ関われる範囲は広くしておくと様々なことに応用が利くと思います。
できれば、営業やGA4を使ったサイト分析、ヒートマップツールを活用したLPO、オーガニック流入を増やすためのSNS運用やSEOなど関われることがあるなら幅広く担当しておくとよいと思います。
特にSEOは短期的に成果の出しやすいリスティングと並行して施策が走ることもあるので両方できるといいかなと思います。
ネット広告周辺知識を広げていきたい方は別記事でネット広告運用者が事業会社へ行くために身に着けたいスキル・知識というテーマで書いているので、何か周辺スキル・知識を高めていきたいという人はこちらも読んでみてください。
インターネット広告代理店”事業”をどう伸ばすかという視点で業務に取り組む
インターネット広告代理店は事業規模にもよりますが、比較的早い段階(社会人3~5年)くらいでマネジメントポジションについていることも珍しくありません。
マネジメント経験ができるのであれば、その中でインターネット広告事業を伸ばすにはどうすべきかという視点で業務に取り組んでみるのも面白いと思います。
マネジメントポジションになれば、さらに上流レイヤーの人とも関りができるので考えたことをぶつけてみると考えが深まると思います。
主旨が異なるのですが、下記記事で業界・企業研究について書いているのであなたの事業の分析をしてどんな方向に進んでいくべきかを考えるきっかけになるのでよければこちらも読んでみてください。
ただのインターネット広告運用者としてではなく事業パートナーの視点でクライアントと向き合う
ただのインターネット広告運用者だと自分のことを思ってしまうと業務範囲が狭くなってしまいます。
関わるお客様のサービスの事業を成長させていくパートナーなんだという視点を持つと考え方が変わり日々の行動も変わってくると思います。
インターネット広告代理店を辞めるべきか続けるべきか考えるための視点
業務が細分化されすぎた場合、事業会社への転職にその経験が活きない可能性
大手のインターネット広告代理店は業務がかなり細分化されていますし、規模が徐々に大きくなってきた代理店はチャレンジがしづらい縦割りの会社になってきているかもしれません。
中には、SNSだけ、ディスプレイだけというような状況で数年の経験を積まないとほかに移れない代理店もあるようです。
細分化された中でスペシャリストになれば、その中で役職がついたりして社内で地位が確立でき、他部署への移動などで新たなチャレンジができるかもしれません。
媒体社側への転職の道も開かれるかもしれませんね。
しかし、あまり特定の業務のみに携わっている期間長くなりすぎるとそれしかできない、応用が利かなそうなどのデメリットにもなり得るので注意が必要です。
ネット広告経験3年以上くらいあると転職市場でも優遇されやすい
求人を見ているとおおむねインターネット広告運用経験3年以上が主流です。
リスティング、SNSなど主要なものは触れておいたほうがいいですし、できればネット広告運用だけではなくて顧客に直接説明する営業経験などもできていると様々な選択肢があると思います。
ちなみにネット広告運用者におすすめな転職エージェントについて下記記事でまとめているのでよければ参考にしてみてください。
何かしら誇れる実績が2~3個ないと転職で細かくヒアリングされると厳しい
転職は当然、即戦力として見られる側面が大きいです。
第二新卒的な立ち位置の転職でもいいですが、インターネット広告代理店から事業会社へ行くのであればインターネット広告代理店経験者としての経験がどのようなものなのかをしっかりヒアリングされることが多いです。
例えば、
・どのようなクライアントがどのような課題を持っていてどう解決したのか
・そのクライアントと対峙しているときにどのような立場/役割でその課題は誰が特定したのか
・その課題にたどり着いた仮説立案/分析のプロセス
・どの程度の数字でどの程度改善ができたか
のような形でひとつの実績に対して細かくヒアリングされたりします。
再現性の高い実績なのかどうかを確認するためです。
こういった実績をできれば複数のサービスで細かくしっかりと自分の実績だと語れるものが用意できているといいかなと思います。
語れる実績がないのであれば、今すぐに転職するよりもまずは実績を作ることに注力したほうがいいと思います。
なぜ事業会社に行きたいのか、行って何がしたいのか理由が明確にあるかどうか
インターネット広告代理店の仕事はどちらかといえばアイディアを出す仕事です。
しかし、事業会社はアイディアを選択し実行し事業成長の責任を取っていくことが求められる仕事です。
インターネット広告代理店で働いていた時以上に数字にシビアに見られたり責任の重さ・重圧があることもあります。
ただたんに事業会社面白そうだけで出てしまうと打ちのめされる可能性もあります。
事業会社に行って何がしたいのかを明確に持っておくと事業会社に転職しても心の支えがあって活躍していけると思います!
ゆくゆくネット広告代理店から転職したいなら次を意識したスキル・経験を身に着けよう
ネット広告代理店の中にいれば
・専門性を高められる
・今後の事業変化によってコンサルのような立ち位置で仕事ができる可能性
・様々々な商品・サービスの成長に携わる経験ができる
・若いうちからマネジメント経験が積める可能性
など様々な魅力があります。
インターネット広告代理店の中でも様々なキャリアを積めると思いますが、ゆくゆく転職を意識して働くならどんな職業に就くかを意識して代理店の中で働けると転職しやすいです。
ネット広告代理店からのよくある転職先は下記8つの業界・職種に行く人が多いです。
それぞれで求められる能力は異なりますしどのようなキャリアを歩むかも変わってきます。
別記事でこれらの業界・職種について書いているので良ければこちらも読んでみてください。
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